2018年8月30日 更新

秋の風物詩、彼岸花には人間との長い共存の歴史あり

暑さがひと段落してくると、そろそろ目につきだすのが田んぼや、道ばたに咲いている彼岸花。 これが咲きだすと、視覚的にも秋の到来を実感する人も多いでしょう。 キレイな花姿ですが、どこか不吉なイメージも湛える彼岸花、その理由を考えてみました。

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もともとは人の手で植えられたもの

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田んぼや道ばたを、最盛期には真っ赤に染め上げるなんて表現も決してオーバーではない彼岸花。曼珠沙華などとも呼ばれます。
文字通り秋の彼岸の時期に咲き誇るのでその名があるのですが、普段目にする彼岸花は自生して咲いているのではなく、もともとは人間の手によって植えられたものだということはご存知でしょうか?

地下に、鱗茎という球根のようなものがあり、これで種をまかなくても毎年花を咲かせるのです。だから我々が目にしているのは昔植えられて、何百代も続いた株の花なのかもしれませんね。

そして、彼岸花にはこの根の部分を中心に毒があります。その毒はアルカロイド系の毒で、少量口にしたくらいでは大丈夫なようですが、大量に摂取すると命に係るほどのものです。

ではなぜ、そんな危険な植物をわざわざ田んぼなどに植えたのでしょうか?

人間にはセーフでも、もっと身体の小さな動物には効果があったからです。
それは、野ネズミやモグラなどです。畑の作物を食い荒らすのは野ネズミで、田んぼの畦(あぜ)などを穴を掘って崩してしまうのがモグラです。
これらの動物から、田畑を護るために人の手によって、畦道などに植えられたのが彼岸花だったというのが一つの理由のようです。
犬などの散歩で何かの拍子に、この彼岸花の根を食べてしまったなどという事故も実際にあるそうなので、小動物を飼っている方は、そのことには気をつけましょう。

もちろん、植えたのにはキレイな花を観賞するためという、花としての本来の理由もあるでしょう。

彼岸花が植えられたもう一つの理由

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田畑を小動物の害から護るという理由のほかにも、わざわざ彼岸花を植えた理由があります。

毎年花を咲かせる彼岸花ですが、そのために入念な手入れがされているなどといったことはあまり聞いたことがありません。つまり、ほったらかしでもちゃんと花が咲き、株は代々存続して行くということで、これには人間にとって大きなメリットがあります。

彼岸花の鱗茎には毒があるといいましたが、その一方その鱗茎はデンプン質を多く含みます。この毒の成分は、十分に水にさらすことによって除去することが出来て、後にはデンプン質が残されるということです。

昔、飢饉に見舞われて、穀類などが採れず食糧が底をついてしまったら、最後の切り札にこの彼岸花からデンプン質を摂取しました。

それは最終手段だったのです。だから、身近なところに植えただけでなく、よほどのことがない限り安易に彼岸花に手を伸ばさないようにいろいろと工夫しました。
お墓の周りに植えられたり、死人花などというありがたくない名前を付けられたりしたのも、おそらくそういったことが理由でしょう。

あまり気にしなくても、割合身近にあり、栄養的にも申し分ない、それだけに簡単に採取してしまうことを牽制したものと思われます。

本来の美しさを鑑賞しよう

昔と違って今となっては、ありがたいことに日常的にそんなに飢死の心配はしなくて済みます。
それなら、彼岸花本来の美しさを鑑賞してみるべきではないでしょうか。
埼玉県の日高市では、彼岸花の見どころである巾着田が有名ですが、そこまで行かなくてもちょっと足を延ばせば、田んぼや河原などでも彼岸花を目にすることは出来ます。

良く見ると繊細で可憐な花姿で、しかも花だけが先に咲き葉が遅れて出てくるので、カメラでも捉え易い姿をしていると思います。
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この記事のキュレーター

カジスマ編集部 カジスマ編集部